ヘルプバンパイア (Help Vampire) 問題

原文: Help Vampires: A Spotter’s Guide

ヘルプバンパイア (Help Vampire) はあらゆるオンラインコミュニティで存在を確認できます。それが親しいところであれ縁遠いところであれ。

彼ら吸血鬼はヘモグロビンで呼吸する代わりに、人々の命とエネルギーを吸い取ります。他者を助けるのが好きな人々を食い物にして、精根尽き果てさせてしまうのです。

彼らは邪悪な怪物ではありません。ヘルプバンパイアという存在です。生きとし生ける物なら誰でも持っている基本的な衝動、食欲本能に従って行動しているにすぎません。それに、自分がヘルプバンパイア状態になっているということすら気づいていないことが多い。だから、あなたが手に持っている杭は下ろしてください。

上記の観点から、ここではヘルプバンパイアの体質改善・再教育についての情報を提供し、さらにヘルプバンパイアを見分けて捕捉する方法も教授していきます。この文章を読み進めるうちにあなた自身がヘルプバンパイアだと気づいたら、どうすればバンパイアの牙を制御することができるか理解してください。

ヘルプバンパイアの見分け方

ヘルプバンパイアを見分けるのにはコツがいります。一見すると普通の人のように見えるので。だけど、以下の簡単なチェックリストを使って個々人のふるまいをよく観察することで、世に蔓延るヘルプバンパイアを識別できるようになると思います:

  • 何度も場にあがっているような同じ質問を繰り返している(しかも頻繁に)
  • 全知全能の Google 様にたずねようとは全然しない、あるいはそもそも検索する方法がわかっていない
  • 質問をするときにどうしても明瞭で具体的にしようとしない
  • 助けていただいているというか、助けてもらって当然というふしがある
  • まるで質問に答える側が Ruby on Rails を使う理由を証明しなくてはならないかのように怒り出す
  • 彼が考えていることをすべてやってくれる人を待ってるのが明らか(自分から動こうとしない)
  • 質問しておきながら答えをもらったことに何も反応しない、彼の代わりに他人がしたことに感謝すらない

他にヘルプバンパイアだとわかるものとして、明確ではあるけれど「答えられない」質問をするというのもあります。見掛けはもっともらしい質問に思えるのだけれど、答えられない理由が色々あったりするのです。例えば、「掲示板を作るにはどうすればいいですか?」あるいは「チャットサイトの作り方を教えて欲しい」といった質問。こんな質問をする目的は以下の三つ:

  • 第一に、答えられない質問に答えようとする哀れな犠牲者を見つけるため
  • 第二に、犠牲者をコミュニティから離反させるように誘導するため
  • 最後に、犠牲者の頭を混乱させて、その間に魂をストローで抜き取るため

以上は自律的に行われます。繰り返しますが、ヘルプバンパイアを責めてはいけません。杭も同様。吸血鬼たちは自分たちが何をしているのかわかっていません。彼らはただそうせざるを得ないだけ。きっと救う手立てはあると私は信じています。

ヘルプバンパイアの狼煙

コミュニティから有用性がなくなってきているなら、それはヘルプバンパイア問題の兆候にほかありません。外からみるとコミュニティが人で賑わっていて活発なようでも、近づいてみると全ての会話が浅いところで留まっていて、ちょっと難しい質問になると途端に会話が途切れているようなら、ヘルプバンパイアが来襲している可能性が高い。

ヘルプバンパイアはインターネット上の流浪の民です。彼らはコミュニティに活気や知性を嗅ぎつけるとすぐ移住してきます。そこにある食べ物を食い尽くしたところで(もう何も期待できないと感じて)離れていき、残されたコミュニティは干上がってしまうのです。

吸血鬼たちのロマのような行動はコミュニティを次々と破壊し、たとえヘルプバンパイア問題が通りすぎてもコミュニティが生き返ることはありません。「最も聡明な人々」はまともな会話ができなくなることを悟ると、ヘルプバンパイアが来ない「壁に囲まれた庭」のコミュニティに逃げていきます。閉ざされたコミュニティはヘルプバンパイアの毒牙から守られますが、ヘルプバンパイアではないユーザーも遠ざけることになるのもやむを得ません。こうしてコミュニティからベテランがいなくなり絶望的な状態になります。

もしもあなたがヘルプバンパイアなら

分かったら止めよう。もちろん、それは簡単ではないし、誰もヘルプバンパイアになりたいなんて思ってないのは分かります。

コミュニティで質問をする前に、どこか別のところで答えが得られないか試行錯誤しよう。自分を広げることになるし探索能力の向上にも繋がります。物事をさらに深く学べるかもしれません。それに、自らおこなったことはいつかきっと自分に返ってくるはず。

どんなときでもまずは王道から:

  1. トラブルシューティングを諦めない。自分で調べるよりも匙を投げて誰かに助けを求める方が楽なんじゃないかと思ってしまうこともよくありますが、そんなときこそ、あと十分間だけ頑張ってみれば突破口が得られたりするものです。自分に自信を持って、もう少しだけ足を伸ばしてみよう。
  2. Google を使う。エラーメッセージの一部を Google で検索したり、ソフトウェアの名前を検索キーワードに追加してください。無駄だと諦めてしまう前に最低でも三回か四回は検索してみましょう。
  3. メーリングリスト・フォーラム・ニュースグループ。おそらく、同じ問題に出会ったことがある人が地球上に何人かいるはずです。幸運にも私達が生きている時代は過去を検索することができます。先人が残してくれた痕跡を調べてみましょう。
  4. ドキュメント。たとえ難解でとても読むことができそうになくても、試してみる価値はあります。理解を深めれば深めるほど、ドキュメントも簡単に理解できるようになるでしょう。
  5. 質問をする。ただし今までとは違った問い方で。直接的に質問をするのではなく、「誰かこんな問題にであった人はいませんか?」あるいは「私の方向性が正しいか確認していただけますか?」と聞いてみよう。おそらく、以前からいた誰かがブログ記事などの役に立つ情報を知っていて、それが光明になるはず。これなら、コミュニティの時間に敬意を示していることになるし、抱えている問題が(たぶん)一人だけではないことがわかる。

質問をするときは、できるかぎり詳しい情報を提供するようにしてください。他人が質問しなくてもいいように、まずは自分自身に以下の質問をするのです:

  • 使っているソフトウェアのバージョンは何か?
  • 使っているオペレーティングシステムは何か?
  • 何をしようとしていて何ができないのか?
  • 何度も問題がおこるのかときどき発生するのか?
  • エラーメッセージは何か?
  • いつ問題が発生したのか?
  • 何が分からないのか?
  • サンプルコード、特にエラーが発生する箇所を示すことはできないか?

可能であればコードサンプルはすぐに提示できるようにしておきます。そして、IRC チャンネルで会話するときに、コードサンプルを pastebin に貼り付けてください。プロジェクトの一部のコードを投稿するときは、コメントを付して分かるように。コードを何も知らない人が見ても理解できるように簡単な説明を付けるべきです。

ヘルプバンパイアを改心させる

コミュニティ内のヘルプバンパイア問題を解決したいのであれば、以下のように行動すれば良い結果が得られるでしょう:

  1. ヘルプバンパイア(や普通の人々)が自立して物事を解決できるように資料を作成する。
  2. ヘルプバンパイアが吸血する糧になるようなことを全て止める。
  3. ヘルプバンパイアに正面から立ち会う。

一目瞭然ですが、暴力を肯定するようなことは全くありません。杭も、キックボクシングも、聖水も必要ありません。機知に富んだ言葉のやり取りだけです。

#1: 資料の作成

コミュニティの資料があっちこっちに散らばっていて、まとまっておらず、鼠の巣よりも難解になっている場合、しっかりとしたヘルプ資料を作成することでヘルプバンパイアの活動は劇的に減ります。

最低限、以下のことが明確に書かれている、読みやすいページを作成するべきです(それがコミュニティによって編集されていればさらに良い):

  • FAQ。見せかけだけではない、本当のよくある質問集。明瞭な言葉遣い、そして質問に対して何をするべきかという情報が書かれている。
  • 最新のエラーリスト、あるいはソフトウェアの最新版で引っかかる可能性が高い問題のリスト。
  • 有用な資料のリスト。トピックごとにまとめられていればベスト (例: “インストール”, “デプロイ”, “サードパーティのアドオン”, “初心者用のチュートリアル”, “上級者向けのチュートリアル” など)。
  • シンプルなコミュニティガイドライン。何が適切なのか知ってさえいれば、ほとんどの人(ヘルプバンパイアも含む)は適切に振る舞うものです。

資料のページは一つのページにまとまっているのが好ましいでしょう。情報を検索するのが楽になり、検索エンジンを使わなくてもよくなります。

#2: 糧を与えるような行為を止める

次に、ヘルプバンパイアをヘルプバンパイアのままにしておくようなことをコミュニティから排除しましょう。

自活させる。たとえ親切心からだとしても、よくある質問に直接答えるのは絶対に止めてください。質問者を助けることにはなりません。相手を怠惰にさせてヘルプバンパイアを増長させるだけです。返信するにしても、答えが書かれている URL を教えるだけにとどめます。ただし、バンパイアが自分で調べてそれでもまだ答えが見つけられないのであれば喜んで助け舟を出すと伝えてください。

思考力を育てる。たとえ毎日五十回はされている質問でなかったとしても、直接に解決方法を答えてはいけません(質問者がバンパイアではなく真の探求者とわかっている場合は別)。質問には自分で考えるように激励する(あるいは道筋を示す)ようにしてください。ヘルプバンパイアがどうしても自分で考えようとしない、また、不満を述べるようであれば、資料となるページの URL を与えて、それ以上の介助は保留しましょう。

自助努力や他人の手助けをしていたら褒める。先に自分で調査をして、賢い質問をした人、あるいは他人を助けようと努力した人には礼を言いましょう。コミュニティの誇りだと伝えてください。特に、積極的に自分を変えようとしている人には惜しみない賛辞と絵文字を。助け合いはトリクルダウン経済です。

親切心を持つ。傲慢な態度を取るのではなく、誠意と激励を持って接すれば、人々やヘルプバンパイアがコミュニティの貴重なメンバーになるやもしれません。何も知らない無知な人々のように見えても、あなたの気概は伝わります。

#3: ヘルプバンパイアに正面から立ち会う

「君はヘルプバンパイアだ」。鋤を鋤と、ヘルプバンパイアをヘルプバンパイアと率直に呼びます。バンパイアな生き方を改めるならばコミュニティのメンバーとして歓迎すると伝えましょう。また、バンパイアとは何なのか教えてあげてください。

優しく、厳しく。ヘルプバンパイアを叱るのは無意味です。自分がヘルプバンパイアであることを悟るまでどうしようもないからです。バンパイアを苛めることは野生動物に餌付けをするのと似ています。ヘルプバンパイアが強情で腹を立てたとしても、冷静に #2 を守るようにしてください。

どうしようもない場合は淘汰する。少数ながらヘルプバンパイアの中には、自分には世話を受ける権利があると考えていて、他人の欲求を満たそうという気は毛頭ないという人もいます。平静に、あらゆる改善策を試して、最後は無視するようになっても、バンパイアが治らない場合……コミュニティから放逐してください。永遠に交流を断つということです。